FtsHプロテアーゼがもつAAA型ATPaseを特徴づけるSRHモチーフが、ATPase活性に重要であることを明らかにした。その結果と、最近発表されたAAA蛋白の一つNSFの結晶構造をもとに、ATP加水分解におけるSRHの機能を説明するモデルを提唱した。このモデルにおいて、FtsHはオリゴマーを形成し、ATPを結合しているFtsHのSRHとその隣に位置するFtsHのSRHがATPのγリン酸基と相互作用し、共にATPの加水分解に関わる。特に、隣の分子のSRHのアルギニン残基は、低分子量G蛋白のパートナー蛋白GAPのアルギニンフィンガーと機能的に類似している。FtsHのオリゴマー形成には、N末端側の膜貫通配列とともに、ペリプラズム領域が重要である。FtsHの構造解析とシャペロン機能の解析のため、ATPaseドメインだけを分離したところ、これらはモノマーとして存在し、ATPase活性を示さなかった。このことも、オリゴマー形成がATPase活性に必要であるという考えを支持する。カゼインが、FtsHの良い基質となることを発見し、試験管内プロテアーゼ活性のアッセイ系を確立できた。この系において、FtsHのNTP分解活性とプロテアーゼ活性には強い相関関係が認められた。今後この系は、基質とFtsHの相互作用の解析系としても有効である。σ^<32>のFtsHによる分解におけるDnaKシャペロンの役割は、σ^<32>がRNAポリメラーゼコアに再結合するのを阻害するという間接的なものであるという仮説のもとに、RNAポリメラーゼコアとの親和性が低下した変異σ^<32>の安定性を調べたところ、予想に反して、これらの変異σ^<32>は、野生型のσ^<32>と全く同様にdnaK変異によって安定化された。したがって、DnaKシャペロンの役割は、何か直接的かつ積極的なものと推定される。残された問題点は、次年度に解明していきたい。
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