研究概要 |
本研究はinterleukin-6(IL-6)ファミリーサイトカイン(IL-6,IL-11,LIF,CNTF,OSM,CT-1)の信号伝達に必須の受容体コンポーネント膜蛋白gp130を介したシグナルと他のサイトカインシグナルのクロストークに焦点をあてて実施された。(1)gp130刺激依存性に増殖するハイブリドーマMH60細胞にbone morphogenetic protein-2(BMP2)のシグナルが入るとアポトーシスが生じるが、これがTAK1-p38キナーゼ経路を経ること、またこの経路がSmad6がTAK1に物理的に会合することでアポトーシスともども阻害されることがわかった。(2)gp130の下流の転写因子STAT3はチロシンリン酸化を経て活性化されるが完全な活性化にはセリン残基のリン酸化が必要とされる。そのリン酸化を担うSTAT3セリンキナーゼの新規発現クローニング方法を確立し、候補分子の単離を行った。(3)胎生14.5日のマウス終脳の神経上皮細胞初代培養系にBMP2を添加するとMAP2陽性ニューロンの出現が抑制され逆にアストロサイトの系譜にある細胞マーカーS100-beta陽性細胞が増加した。この系にLIFをさらに添加すると成熟アストロサイトマーカーGFAP陽性細胞が出現した。BMP2は神経上皮細胞でnegative helix-loop-helix(HLH)蛋白Hes5,Id1,Id3の発現誘導を導いた。BMP2がnegative HLH蛋白の発現を介してニューロン分化に必要なbasic HLH型転写因子の作用を阻害することで、ニューロンへの細胞系譜に向かうことが運命付けられつつある細胞をアストロサイトの細胞系譜に向かわせ、そこにさらにLIFが加わるとシグナルのクロストークによりアストロサイトに成熟すると考察される。
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