研究概要 |
本研究の目的は噛乳動物の細胞周期のG1期からS期への進行に必須なS期形成促進因子複合体の同定と解析である。酵母においては基質であるサイクリンやCDK阻害蛋白質の分解実行因子であるSCFユビキチンリガーゼ複合体がS期形成促進因子複合体の本体と考えられる。F-box蛋白質は特異的な基質を認識すると同時にSKP1,cdc53(Cul-1)と結合してユビキチンリガーゼ複合体を形成し、E2であるcdc34およびE1からユビキチンを基質に重合させる。我々はまずマウスSCFユビキチンリガーゼ複合体の構成成分のクローニングを行い、それらを用いて機能解析した。 1. 酵母のSKP1,cdc53,cdc34のcDNAの塩基配列をもとにマウス相同遺伝子(それぞれSKP1,Cul-1,UBC3)のcDNAをクローニングし、配列を決定した。 2. 酵母F-box蛋白質cdc4と同様にF-boxと7つのWD40リピートをもつF-box蛋白質のcDNAをESTデータベースよりクローニングし、全配列を決定し、FWD1と名付けた。 3. 昆虫細胞の系で作成した組み換えタンパク質を用いてFWD1,SKP1,Cul-1が複合体を形成することを確認した。 4. FWD1はサイクリンやCDK阻害蛋白質には結合しなかった。しかし重要なサイトカインシグナル伝達因子であるNFκBの阻害分子であるIκBαのリン酸化型とβ-cateninのリン酸化型に特異的に結合した。 5. リン酸化されたIκBαとβ-cateninはFWD1を介してユビキチン化されたあと、プロテアソームに認識され分解されることが明らかになった。 本研究の結果より、FWD1はIκBαとβ-cateninのユビキチンリガーゼであることがあきらかになった。今後、FWD1,SKPl,Cul-1のノックアウトマウスを作成、解析して、個体レベルでのSCFユビキチンリガーゼ複合体の機能を解析する予定である。
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