1)癌抑制作用をもつ合成レチノイドであるN-(4-hydroxyphenyl)retinamide(HPR)は細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導できる。われわれはin vitroにおけるこのHPRの増殖抑制効果とそれにおけるRBタンパク質の役割を解析した。その結果、HPRの増殖抑制活性はサイクリンD1遺伝子発現の減少と、RBタンパク質をターゲットとするCDK類の活性阻害とによって生じるらしいことがわかった。 2)PKCは普通、細胞膜でフォスフォリピドによって活性化されて細胞内ヘシグナルを伝えるが、われわれは新しい機能を見つけた。PKCηがcyclin E/cdk2/p21と複合体を形成し、cdk2-kinase活性を強く阻害することを見出した。 3)Rasからのシグナルがc-Mycの安定化からE2F-1の発現誘導を通じてp53依存性のアポトーシスを誘導することがあるが、この時のc-Mycの安定化にMyc-box1に存在する2つのリン酸化部位が関係するということが以前からの研究で推定されたので、Thr58とSer62のリン酸化部位特異的抗体を作製して解析を進めた。その結果、RasがらのシグナルでSer62がリン酸化されるとc-Mycの半減期が長くなって安定化し、逆に、Thr58がリン酸化されるとc-Mycの分解が促進されることがわかった。
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