研究課題/領域番号 |
10480215
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 智 大阪大学, 医学部, 助教授 (90283746)
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研究分担者 |
山下 俊英 大阪大学, 医学部, 助手 (10301269)
玉谷 実智夫 大阪大学, 医学部, 助手 (30294052)
遠山 正彌 大阪大学, 医学部, 教授 (40028593)
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キーワード | 熱ショック蛋白 / エネルギー代謝 / ストレス応答 / トランスジェニック動物 / 虚血レポーター / 遺伝子治療 |
研究概要 |
虚血環境下における遺伝子発現の制御は、脳血管障害の遺伝子治療を考える上で必須のテクノロジーである。その第一歩として、脳虚血におけるheat shock protein(HSP)72によるストレス応答を、レポーター遺伝子およびそれを導入したトランスジェニックマウスを用いて検討した。ヒト由来のHSP72プロモーター遺伝子とluciferase遺伝子を組み合わせたレポーター遺伝子を作成、lipofection法を用いてラット新生児アストログリア細胞(AST)のprimary cultureに導入した。通常、ASTを低酸素暴露後再酸素化するとHSP72が誘導されるが、そのメッセージ、抗原量とともにluciferaseで示されるHSP promoter活性は再酸素化後6時間で極大となり、細胞内のADP/AT比が最大、energy chargeが最小となる時点と一致した。また、再酸素化や嫌気性解糖代謝阻害剤を与えることによって、ADP/ATP比及びenergy chargeは、HSP promoter活性と指数関数的な相関を呈した。この虚血レポーターのin-vitroにおける発現を確認するため、次にSV40の核移行シグナルを付けたHSPプロモーター遺伝子と、β-galactosidase遺伝子(lacZ)とを組み合わせたレポーター遺伝子を導入したtransgenic mouseの作成を試みた。現在PCR及びSouthemhybridizationで選別しながら複数のfamily lineを作成している過程であるが、F2のマウス新生児脳より得たASTのcultureを再酸素化や砒素などのストレスに暴露すると、核から抽出したlacZの活性は上記のAST初代培養系の場合とほぼ同様の傾向を示した。また同じcultureを用いてX-gal stainingを行ったところ、核に限局した青染、すなわちlacZの発現を認めた。さらに制作過程にあるF2のvivo modelにて片側頚動脈閉塞および再潅流を行っても、やはり虚血ストレスによるレポーター遺伝子の発現が見られ、核の青染が起こることが確認された。ストレス蛋白のプロモーターを用いたレポーター遺伝子のtransfection系やそれを導入したトランスジェニックマウスは、虚血ストレス応答の解析に有用であることが示唆された。またそれらはストレス応答の簡便な定量化、可視化も可能とすることで脳虚血の刊究に役立つと考えられ、また治療に関しても今後新たな可能性を提示するものと考えられる。
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