研究課題/領域番号 |
10480218
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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研究分担者 |
冨永 洋平 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (90304823)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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キーワード | 活性酸素 / 8-オキソグアニン / 2-ハイドロキシアデニン / ミトコンドリア / 神経変性 / パーキンソン病 / アルツハイマー病 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究概要 |
個体発生過程において神経幹細胞から生じた神経前駆細胞は胎生期から出生直後にかけて分裂増殖し、膨大な数の神経細胞を供給する。しかしながら、一旦神経細胞に分化した細胞はもはや分裂することはない。神経細胞はその個体の生涯を通して生存し機能することが必要と考えられるが、分裂能を欠くため老化に伴う種々の障害等により変性脱落する運命にある。神経伝達物質の放出など神経細胞の機能を保持するために必要な大量のエネルギーのほとんどは、ミトコンドリアでの酸素呼吸により供給されている。ところが、酸素呼吸では反応性の高い活性酸素が常時発生するため、神経細胞はその活動を維持する上で活性酸素による酸化障害の危機に常に曝されている。 本研究では、活性酸素によるDNAやヌクレオチドの酸化損傷が脳・神経細胞の維持にとって大きな障害であると位置付け、ヒトを始めとする哺乳動物の脳・神経細胞における「酸化ヌクレオチドの分解・排除機構」と「酸化DNA損傷の修復機構」の解明を進めた。我々はヒト細胞から酸化DNA損傷の修復に関わる3つの酵素、酸化プリンヌクレオシド三リン酸分解酵素(MTH1遺伝子産物)、2-ヒドロキシアデニン/アデニンDNAグリコシラーゼ(MYH遺伝子産物)、8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ(OGG1遺伝子産物)を同定し、その機能や発現の調節機構およびヒト神経変性疾患における発現変動の解析から、これら3つの遺伝子産物は脳・神経細胞の核ゲノムとミトコンドリアゲノムの維持に関わることを明らかにし、さらにその発現の異常がヒト神経変性疾患の発症に関与する可能性を示唆する結果を得た。 従来、脳・神経細胞は終末分化した細胞であり、その核ゲノムDNAはもはや複製されないために、損傷を受けても修復の必要性がないと考えられてきたが、我々の研究成果は、脳・神経細胞の生存と機能保持には核ゲノム情報の維持と正確な転写が必須であり、さらにこのような生命活動を維持するためのエネルギー供給の観点からミトコンドリアゲノムDNAの維持が重要であることを強く示唆している。 我々は、本研究で3つの遺伝子欠損マウスを樹立しているので、今後いろいろな疾患モデルを開発し、それぞれのモデルにおいてこれらの遺伝子欠損がもたらす影響を解析する予定である。このようなアプローチにより、それぞれの遺伝子が脳・神経細胞を守る上で果たす役割の解明を目指す。
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