哺乳類ではGRP受容体、NMB受容体、BRS-3の3種のボンベシン様ペプチド受容体が存在する。ボンベシンシステムは内外分泌、代謝の調節や行動の制御などに関係することが示唆されているが各受容体の生理的役割をより詳細に個体レベルで検討するため遺伝子欠損マウスの作製を行なった。これまでにGRP受容体およびBRS-3欠損マウスについて表現型の解析を行いGRP受容体欠損マウスが非攻撃性の社会相互作用の亢進及び活動期(夜間)の運動量の増加を示すこと、BRS-3欠損マウスが中枢性の肥満、高血圧、糖代謝障害を呈することを報告した。今年度はNMB受容体欠損マウスの病態生理学的解析を行ない、NMB投与時に記められる体温降下が野生型に比してNMB受容体欠損マウスで減弱していることを見い出した。またGRPとNMBの作用効果比較をNMB受容体欠損マウスを用いて行ない、消化管収縮、摂食抑制の作用はNMB受容体よりもGRP受容体を介したものが主であることを見い出した。運動量や社会相互作用に関してはNMB受容体欠損マウスは特に野生型マウスと比較して異常を呈さなかった。 また、今年度は未知であるBRS-3の内在性リガンドの分子生物学的同定を試みた。GRP.NMBとのアミノ酸相同性を予測したアプローチ(degenerateプライマーを用いたRT-PCRなど)や、リガンドの発現差を推定したアプローチ(BRS-3欠損マウスと野生型マウス間のdifferential displayなど)により候補遺伝子を探索した。前者のアプローチでは陽性結果を得ることが出来なかったが、後者のアプローチでBRS-3欠損マウスと野生型マウス間で発現に差のある遺伝子を複数認めた。その中にBRS-3の内在性リガンドが含まれているかどうかを現在検討中である。
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