研究課題/領域番号 |
10480225
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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研究分担者 |
酒井 雅史 新潟大学, 脳研究所, 助手 (30251846)
隠木 達也 新潟大学, 脳研究所, 助手 (10303166)
工藤 雅治 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80153310)
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キーワード | 大脳聴覚野 / 二音弁別テスト / 長期増強 / 長期抑圧 / カルシウム / 一酸化窒素 |
研究概要 |
我々はラット大脳皮質聴覚野切片標本でLTPを記録すると、その振幅が視覚野の2倍程度であることを見出した。一方LTPを起こす高頻度(100Hz)刺激の代わりに1Hz程度の低頻度刺激を用いるとLTDが誘発された。これらのLTPやLTDの機能を解析するため、独自の二音弁別テストを開発した。このテストを用い、ラットを数日間音刺激に曝すと二音弁別能が上昇するが、この二音弁別能の変化が予め両側大脳聴覚野にLTPやLTDをブロックするNMDA受容体の阻害剤であるAPVを注入しておくと阻害された。聴覚情報処理において未解明な点は、時間的な情報が如何に検出され、処理されているかという点である。古典的な破壊実験は聴覚野が音の時間パターンの弁別に必須であることを示しているので、聴覚野に音の時間的な情報を処理する機構が有るかもしれない。我々は大脳聴覚野切片標本を用い、白質上の二点を高頻度(100ヘルツ、30発)で刺激することを試みた。このときそれぞれの刺激に対する反応(LTPの起こり方)がどうなるかを解析した。時間差が0.5秒から10秒存在した場合、先行刺激にのみ選択的にLTPが起きた。また白質刺激に対するカルシウム上昇反応を画像として捉えて解析したところ、時間差をつけた高頻度刺激を行うと、先行刺激に対するLTPが広範囲に起きるのに対し、後の刺激に対しては狭い範囲でしか起きないということが示された。今後の課題としてはこのような時間差をうまく検出する現象の背景に有る分子機構を解明することである。大脳聴覚野ではNO・cGMP信号系が深い層のLTPの誘発を促進するが、浅い層のLTPの誘発自体はNO・cGMP信号系とは無関係に起きる。しかし入力刺激間の干渉作用がNO依存性に起きるという可能性は残っている。NO以外にも何らかのメッセンジャー系の関与が考えられるので、これらの可能性について検討していく。
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