グリア細胞の機能多様性に基づいた細胞系譜の解析とその発生機序の解明

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10480228
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 岡崎国立共同研究機構
• 研究代表者: 池中 一裕 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00144527)
• 研究分担者: 中平 健祐 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (10260043) ; 馬場 広子 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (40271499)
• キーワード: アストロサイト / オリゴデンドロサイト / レトロウィルス / シスタチンC / GFAP / GLAST / PLP

研究概要

我々はレトロウィルスベクターとパッケージング細胞、ウィルス濃縮方法を改良し、1x10^<12>cfu/mlという高力価レトロウィルスを得ることに成功した。このウィルスを胎生El4のマウス脳室へ注入し、脳室近傍で分裂期にある未分化な細胞集団をラベルした。生後33日目に大脳皮質を解析したところ、第2,3層のニューロン、灰白質中のアストロサイト、一部のオリゴデンドロサイトがラベルされたが、白質のアストロサイトは全くラベルされなかった。機能的にも異なると思われる白質と灰白質のアストロサイトが、発生様式においても異なることが明らかになった。
マウス胎仔E12の後脳のフラット培養を行い、オリゴデンドロサイトの発生時期と領域をO4抗体およびPLPのcRNAプローブを用い解析した。未成熟な形態をしたオリゴデンドロサイトがE12+1DIVからフロアプレート付近に出現し、培養に伴い頭部および体側方向へと分布が広がった。背側を切除すると陽性細胞が増加したことから、背側にオリゴデンドロサイトの分化抑制シグナルの存在する可能性を見いだした。
近年、グルタミン酸トランスポーター:GLASTが脊髄において未成熟アストロサイトのマーカーになる事が報告された。GLASTプローブを用い前脳を調べたところ、発生様式の異なる複数のGLAST陽性集団が検出された。各集団がアストロサイト亜集団に対応している可能性が考えられる。一方、マウス脳cDNAライブラリーからGFAPプロモーターを活性化する因子のクローニングを行い、シスタチンCという遺伝子を単離した。この分子がGLAST同様、アストロサイトの前駆細胞に発現していることが分かった。興味深いことにバーグマングリアを含む一部の細胞集団はGLAST・GFAP陽性であるのにもかかわらず、シスタチンC陰性であり、これは機能的な差異を反映していると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Fujimoto,I.: "Systematic analysis of N-linked sugar chains from whole tissue employing partial automation." Analytical Biochemstry.266(in press).
• [文献書誌] Shibata,R.: "Expression of Kv3.1 and Kv4.2 genes in developing cerebellar granule cells." Dev.Neurosci.(in press).
• [文献書誌] Yamada,M.: "PLP gene product can be secreted and exhibit biological activity during early development." J.Neurosci.(in press).
• [文献書誌] Spassky,N.: "Multiple restricted origin of oligodendrocytes." J.Neurosci.18(20). 8331-8343 (1998)
• [文献書誌] Yonemasu,T.: "The Proximal promoter region is sufficient to regulate the tissue-specific expression of UDP-galactose:Ceramide galactosyltransferase gene" J.Neurosci.Res.52. 757-765 (1998)
• [文献書誌] Miyamura,T.: "Metabolic labeling of a subset of glial cells by UDP-galactose:Implication for astrocyte lineage diversity." J.Neurosci.Res.52. 173-183 (1998)