研究課題/領域番号 |
10480232
|
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
伊佐 正 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (20212805)
|
研究分担者 |
井上 由香 日本学術振興会, 特別研究員
斎藤 康彦 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (70290913)
小林 康 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (60311198)
|
キーワード | 上丘 / 局所神経回路 / 非線形的信号変換 / サッケード運動 / 脱抑制 / NMDA受容体 / ラット / スライス |
研究概要 |
既に我々は上丘中間層ニューロンからwhole cell記録を行い、bicuculline存在下にて視神経束ないしは浅層を電気刺激すると、刺激強度がある閾値を超えると1秒以上の長く持続するような脱分極と20発以上の活動電位の連続発火を引き起こすこと、そしてこのような現象は浅層や視神経層のニューロンでは見られないことから、中間層にはGABA受容体による抑制からの脱抑制が起きると、非線形的な入出力関係を示す「ゲート」機構が存在することを見出していた。そこで今回このような非線形的活性化機構の実体をさらに詳細に調べるために、まずこのような非線形性が、中間層ニューロンのintrinsicな特性によるのか、それとも、シナプス機構や局所神経回路の構造によるのかを調べた。中間層ニューロンの大多数は、電流通電に対する発火頻度を調べると注入電流量と発火頻度の間にほぼ線形的な関係を示すのに対して、シナプス性に活性化すると非線形的な入出力関係を示すこと、また細胞内Ca^<2+>が非線形的活性化に関与するかどうかを調べるために細胞内液に30mMのBAPTAを加えて細胞内Ca^<2+>をキレートしても長い脱分極と連発発火が誘発されることから、非線形的活性化は中間層ニューロンのintrinsicな特性によるのではないと結論された。そこでさらに中間層の隣接する2個のニューロンから同時にwhole cell記録を行い、細胞外液にbicucullineを加え、Mg^<2+>濃度を1mMから0.1mMに下げると、これらのニューロンは、互いに直接結合していなくても、自発的に同期的に脱分極を繰り返すようになった。この同期的脱分極はAPVの投与で消失した。以上の結果から、上丘中間層は興奮性結合で結ばれた細胞集団から構成されており、GABAによる抑制が解除されると非線形的に同期して活性化する性質があること、またNMDA受容体もこれらのニューロン集団における興奮性シナプス伝達に関与し、非線形性の実現に寄与するということが明らかになった。このような神経回路の構造が上丘中間層における「ゲート」の実体であると考えられた。
|