研究課題/領域番号 |
10480236
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
米田 嘉重郎 東京医科大学, 医学部, 助教授 (90074533)
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研究分担者 |
金澤 康徳 自治医科大学, 医学部, 教授 (10010399)
田中 彰彦 東京医科大学, 医学部, 助手 (40287149)
金沢 真雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (10147184)
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キーワード | II型糖尿病 / ラット / 原因遺伝子マッピング / 連鎖解析 / マイクロサテライト |
研究概要 |
研究の目的: 現在、糖尿病のモデル動物を用いて、糖尿病形質(病態)の遺伝学的解析が盛んに行われている。しかし、多くの原因遺伝子が関与し多様な病態を示すヒト糖尿病のすべてに対応できるだけのモデル動物は開発されていない。ごく最近、II型糖尿病を自然発症するラットの近交系SDT系統が、鳥居薬品研究所で確立された。この系統の主な特徴として、(1)雌では100%(6-20週令)発症するが雌では約50% (2)雌雄ともに非肥満 (3)発症後には膵β細胞数の著明な減少 (4)発症後の全個体に白内障が認められる。これらの特徴は、モデル動物では新しいタイプであり、新しい複数の原因遺伝子の関与が推察される。 本研究はSDTラットにおける原因遺伝子の数(複数)と遺伝様式を、二つの戻し交配系を作出して明らかにし、かつ連鎖解析によるラット染色体上へのマッピングを第一目的とした。さらに、原因遺伝子に関してヒトとラット間の比較地図を作成する。本年度の目的は、第一目的を達成するための一つ目の戻し交配系について、遺伝学的解析を行うことにあった。 これまでに得られた研究実績は下記の通りである。 1. 戻し交配分離個体(N2)の作出と糖尿病の発症:近交系のBNラット系統を用い、N2[(SDT×BN)Fl×SDT]を293匹(雄:179、雌=114)を作出した。Fl個体(雌雄)のすべては経口糖負荷試験(OGGT)随時血糖値ともに正常(BNタイプ)であったが、N2の雄では4.4%が糖尿病を示した。このことから、本ラットにおける糖尿病の原因遺伝子の数は5〜6個存在すると考えられた。現在、雄における膵島の病理組織学的変化の解析、雌の糖尿病発症などについて解析を行っている。 2. 戻し交配分離個体(N2)における遺伝子型の判定: (1) SDTとBN系統間におけるDNA多型(SSLP)マーカーの検索;各染色体に分布するSSLPマーカー534個を検索し、うち307個のマーカーで両系統間に多型を検出した。このことはマーカー間の遺伝的距離が平均で4.9cMとなり、連鎖解析に十分なものと判断された。 (2) 連鎖解析のための遺伝子型判定;現在、全てのN2個体からゲノムDNAを抽出して、307個のマーカーについて、それぞれの遺伝子型を判定中である。 以上が本年度の研究実績である。これらの成果は、SDTラットにおける糖尿病原因遺伝子のマッピングという本研究の第一目的が、研究期間内に達成できることを強く示唆している。
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