研究概要 |
超音波と光の相互作用を利用して超音波で光を変調し,測定部位を超音波で同定することにより超音波の分解能で生体内の構造や代謝機能をイメージングする方法に関し,平成10年度において以下に述べる検討を行った. ●実験システムの構築:本研究の最終目的は生体に入射した光の後方散乱光により生体深部の光学特性を推定する反射型計測であるが,本年度は基礎的な研究として,透過光による計測の可能性について検討した.冷却光電子増倍管とロックインアンプを用いた微小光検出器,フォトンとフォノンの相互作用によって生じるドプラシフトを検出するマッハツェンダ型干渉計を含む実験システムを作成した. ●連続超音波による散乱体中のイメージング:透過散乱光を用いて,吸収体を内包した強散乱体組織ファントムのイメージング実験を行った結果,超音波変調光を用いたイメージングの空間分解能は変調がない場合に比べ格段に向上することが確認された.しかし強散乱体透過による変調信号の減衰は大きく,変調透過光の検出限界は厚さ35mmのファントムにおいて,生体の1/5程度の散乱条件(μs′=0.19)程度にとどまった. ●超音波による光の変調機序に関する基礎検討:散乱媒質中で支配的と考えられる,ドプラ効果に基づく光変調機序に関する基礎的検討として,光の散乱が超音波焦点の前,焦点,後の3つの位置で発生した場合の変調光強度を比較したところ,屈折に基づく変調光は,散乱が発生する位置によらず散乱体の濃度増加に伴い急速に減衰するのに対し,ドプラ効果に基づく変調は,超音波焦点後の散乱の影響を比較的受けにくいことが示された.
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