研究概要 |
本年度は,超音波変調型近赤外光を用いた生体イメージングの高感度化および高分解能化に関し,下記の検討を行った. 1.2次元センサを用いた微弱変調光検出法の提案と有用性の確認 超音波で変調された光の強度は,透過する生体組織の厚さの増加に伴って指数関数的に減衰することから,生体の光イメージングを実現するためには微弱な超音波変調光の検出が最重要課題である.昨年度までは1次元センサ(光電子増倍管)を用いた変調光検出法について検討してきたが,透過観察可能な生体組織の厚さは10.5mm程度(等価散乱係数0.5/mm)に限られていた.そこで本年度は,パルスレーザ光を試料に照射し,試料透過後に出射側に発生するスペックルパターンを2次元センサで計測し,変調成分を検出する新手法を考案し,その有用性について検討した.スペックルパターンを利用する手法は,先にWangらが提案しているが,本研究では光をパルス化することにより,検出感度をさらに向上することができる.また,提案した手法の実現可能性を検討するために実験システムを開発し,変調光の検出限界が従来に比べ100倍程度改善されることを確認した.この改善により,透過観察可能な生体組織の厚さは約14mmとなった. 2.高分解能化のための新手法の提案 光を変調する超音波をパルス化することにより光イメージングの分解能を向上できることが,以前より指摘されている.しかしこれまでに提案されている手法では,微弱変調光を検出するために連続波超音波を用いる必要があり,パルス超音波を用いた手法は報告されていない.そこで本年度は,上述したスペックルパターンを検出する手法において,光と超音波の両方をパルス化し,かつ微弱光検出を行える手法を新たに考案するとともに,これを実現する実験システムを開発し,手法の実現可能性を確認した.
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