研究概要 |
平成11年度においては,穿刺型超音波プローブを用いた計測に関する要素研究として下記の項目について検討した. ・生体組織の減衰計測と機序の解明:減衰特性の周波数依存性を決定するメカニズムに関する検討として,生体組織の減衰が生体の主構成要素である水溶性タンパク質と,細胞や繊維構造のようなマクロな構造の両方で決定されると仮定し,肝臓組織をタンパク質抽出液とそれ以外の部分とに分離して減衰を測定した.その結果,周波数10MHz付近を境界として,高周波域ではタンパク質水溶液の減衰が,低周波域では,それ以外のマクロな構造を持つ成分の減衰が支配的になることが示された.また,生体組織の後方散乱特性に関する検討のためのシステムとして,中心周波数50MHzの広帯域振動子を用いた計測システムを作成した. ・相関法による血流計測法の組織血流計測への拡張:昨年度の課題であった相関像の改善を目的として,超音波送受信回路の改善を行なうとともに,Bモード,相関像作成のための超音波信号処理法を改善した.ブタ腎臓を用いてin vitroで画像の取得を行い改善効果を確認した上で,次にウサギの肝臓を対象にin vivoでの超音波像の取得を行った.その結果,肝臓の微小な血管と思われる像が観察されたものの,アーチファクトである可能性も残されており,さらにS/N改良のための検討が必要と考えられた. ・超音波プローブの作成:微小プローブの作成に関して調査を行ない,穿刺型プローブに最適な数10MHz帯域の微小振動子を作成している米国企業が判明したことから,今後この振動子を利用したプローブの作成および評価を行う予定である.
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