研究概要 |
本年度は,穿刺型超音波マイクロプローブを用いたイメージング手法に関し,以下の検討を行った. 1.生体組織の減衰機序の解明:細胞構造が超音波減衰に与える影響 生体組織の基本構成要素である細胞が超音波の減衰特性に与える影響について検討するため,赤血球を用いて作成した試料の超音波減衰特性を計測した.その結果,赤血球を生理食塩水に浮遊させた試料では,赤血球内に含まれるヘモグロビン水溶液が示す減衰特性(減衰係数が周波数の1.3乗に比例して増加する特性)と異なる減衰特性を示したのに対し,赤血球のみを取り出した試料,すなわち一般の生体組織のように細胞が密接した試料では,ヘモグロビン水溶液と同様,減衰係数が周波数の1.3乗に比例して増加する特性を示した.これより,生体組織の減衰特性は,主として細胞を構成している物質自体の特性を強く反映する一方,細胞の構造自体の影響は小さいのもと考えられた. 2.穿刺型プローブを用いた画像取得システム:in vivoでの実用性の向上 これまでに開発した画像取得システムでは,2次元の画像を取得するために振動子をパルスモー夕によりスキャンしており,画像データの取得に60秒,相関像の計算に60秒程度の時間を要したことから,体動を考慮する必要があるin vivoでの実用性に問題があると考えられた.そこで,新しい画像取得システムでは振動子を手動でスキャンし,リニアエンコーダを用いて移動量を検出して超音波パルスを発生する方式を採用し,さらにデータ収集の制御ソフトと信号処理アルゴリズムを改善することにより,画像データの取得時間を3秒,相関像計算に要する時間を3秒程度に短縮した.さらに,本システムを用いてウサギを用いたin vivo実験を行い,穿刺型超音波マイクロプローブによるイメージングの実用性が格段に向上することを確認した.
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