研究概要 |
本年度は,ラットの手術方法を確立するとともに,血流量の増加・減少および血圧の上昇に対する動脈壁の反応を調べた。 (1)ラットの手術方法の確立: セボフレン麻酔下でラット片側の総顆動脈を納紮ずることにより反対測の総頚動脈の血流重を約10%増加させ,片側の外頸動脈を結紮することにより同じ側の総頸頚動脈の血流量を約30%減少させることが出来た。また,腎動脈間で腹大動脈を結紮することにより上半身の血圧を急激に160mmHg以上に増加させることが出来た。手術後の回復が早く,安定した血流,血圧波形が得られる方法を確立した。 (2)血流の変化に対する動脈壁の反応: ラット総頸動脈の血流量を増加,または減少させて2,4,8週間飼育した後,総頸動脈の力学試験を非活性状態,最大収縮状態,完全弛緩状態において行い,血流量の変化に対ずる動脈壁の反応を調べた。動脈壁は,血流量の変化に対して,血管内壁剪断応力,壁内円周方向応力を正常値に維持するように適応することがわかった。また,この適応反応には血管平滑筋細胞が関与することがわかった。 (3)血圧の上昇に対する動脈壁の反応: ラットの腹大動脈の結紮により,極めて迅速にラットを高血圧状態にして,2,4,8ト1間飼育した後,総頸動脈の力学試験を行って,血圧の上昇に対して動脈壁が短期間のうちに起こす反応を調べた。動脈壁は通常の状態でも有意に収縮して壁厚さを増大させ,高血圧にも関わらず壁内円周方向応力を正常レベルに保つことがわかり,この適応には平滑筋細胞が大きく関与することがわかった。 次年度は,高血流と高血圧の同時発生に対する動脈壁の応答を調べる予定である。
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