1.マウス小脳のミクロゾーム膜画分に豊富なタイプ1IP_3受容体チャネルは、トリプシン限定消化に耐性の5つの折れたたみドメイン構造をとることを明らかにした。N末端側のIP_3結合領域は2つ、調節領域を含む中央部は3つ、C末端側のチャネル領域は1つのトリプシン耐性ドメインに分割される。トリプシン感受性部位はalternative splicing部位やカルモジュリン結合などの調節領域に集中していることから、これらの部位は分子表面に露呈して比較的ほぐれた構造をとっていると推定される。 2.トリプシンで分断後も5つのトリプシン耐性ドメインどうしは蛋白質間相互作用により比較的安定に会合しており、十分なIP_3結合活性と誘導Ca^<2+>放出活性を保持していた。このことから、IP_3受容体はCa^<2+>ストア膜上で比較的コンパクトに折れたたまれた高次構造をもち、IP_3リガンド結合とチャネル開口のカップリングは緊密なドメイン間相互作用によりおこることを示唆している。 3.IP_3結合領域を構成する2つのトリプシン耐性ドメインのうち、N末端側ドメインにはIP_3結合活性がなく、C末端側には低親和性の活性がみられた。ところが、両者をin vitroで混合すると高親和性のIP_3結合活性が出現した。このことから、2つのIP_3結合ドメインが相互作用することによりIP_3リガンド結合ポケットを形成することが明らかとなった。このIP_3結合ドメイン構造を1つの発現ユニットとして大腸菌で発現させることで、高親和性のIP_3結合活性を可溶性の蛋白質として高収率で産生するシステムを開発した。 4.小脳のタイプ1IP_3受容体のチャネル活性を平面脂質二重膜の再構成して単一チャネル記録解析を行った。その結果、IP_3受容体の二相性Ca^<2+>感受性のうち、約0.5μM以上の高Ca^<2+>濃度によってもたらされる抑制相はカルモジュリンに依存していることを明らかにした。このことは、カルモジュリンがIP_3受容体の高Ca^<2+>濃度センサーとして働いてIP_3誘導Ca^<2+>放出を抑制することで、細胞内Ca^<2+>ダイナミクスの制御に重要な役割を演じることを示唆している。 5.細胞分裂に伴ってIP_3受容体感受性の細胞内Ca^<2+>ストアの局在はダイナミックな変動を示し、細胞質分裂に必要なCa^<2+>シグナル伝達に関与することを明らかにした。 6.T細胞のアポトーシス誘導によってタイプ1IP_3受容体がカスパーゼ3依存的な部分分解を受け、その結果、チャネル活性が不活化されることを明らかにした。但し、タイプ2と3では分解はみられなかった。
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