幅広い物質相でのイオン化は、放出電子が分子との衝突により減速・熱化し、イオンとの再結合もしくは壁拡散という一連のサイクルによって終結する。本研究はイオン化の終結反応である電子・正イオン再結合反応に対する超高真空下でクラスターイオンビームと電子ビームとのビーム合流実験による電子衝突分光を行うための新しい実験方法を開発し、反応の機構解明と断面積の取得を行うことを目的とするものである。 本年度は、昨年度に建設した電子ビーム・イオンビームの発生装置と真空装置とを組み合わせ実験システムを完成させるため、遅延同時計測システムを中心とする計測系の整備と、複合パルス発生回路の製作を行った。昨年度の予備的な実験で明らかにされた質量選別クラスタービーム源の強化のために、ターボ分子ポンプを新たに購入して真空排気の増強をはかるとともに、イオン源と質量分析計を中心として改良を行った。またシステムの調整・運転の必要上の種々の消耗品を購入した。なお質量分析計の解析と最適化のために、山口大学VBL非常勤研究員、河田道人を研究協力者として加えて遂行した。以上、交付申諸書記載のとおりである。 これらを経て電子・正イオン再結合実験のための装置の性能評価と最適化のための予備的データの取得を開始している。さらに再結合反応の理論解析のための計算プログラムの開発も並行して行った。以上の通り、本年度の研究をほぼ遅滞なく行た。
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