水辺整備の計画策定では、従来、住民の意見を把握する手法としてアンケート調査やワークショップなどが行われてきた。しかし、これらの手法は計画の中に住民の意見を明示的に反映する方法論として確立するまでに至っていない。これは、住民による水辺環境に対する認識や評価が水辺環境に対する知覚情報、個人の嗜好性や生活環境などの要因の影響を複雑に受けて、曖昧なものとなっているためである。したがって、今年度は水辺環境に対する住民の認識や評価を明示的に反映した都市域における水辺の環境評価を行う方法論について検討を行った。人々は水辺の環境要素の状態を個別に認識しつつも、水辺環境の良し悪しは漠然とした印象で評価していると考えられる。したがって、共分散構造分析を適用して、いくつかの水辺環境に対する認識データや感覚指標を潜在変数に集約し、この潜在変数をモデルの特性変数として取り込んだ。その結果、対象河川のイメージに合致した潜在変数を抽出することができ、水辺利用の意思決定に関して、個別では統計的説明力を持たない認識データをより多くモデルに取り込めることを示した。さらに、表明選好(SP:Stated Preference)データを用いた水辺の環境評価手法について検討を行った。すなわち、実際には存在しない特性変数や特性変数値の範囲を変えるなど、水辺環境の仮想的状態を示して得られたSPデータをRPデータと共に用いてモデルの操作性を高めるための検討を行った。
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