研究概要 |
Yamadazyma farinosa IFO 10896による還元反応はこれまで主としてメチルケトンを基質として行われてきた。今年度はトリフルオロメチルケトンに対して同様の反応性を有するかどうか検討した。一般にトリフルオロメチルは立体的にはメチル基よりはるかに嵩高く、また非常に疎水性なので有機化学的にはメチル基とは全く異なる反応性を示す。実際に上記酵母を栄養培地に増殖し、p-トリルチオメチルトリフルオロメチルケトンを培地に加えて嫌気的条件下で撹拌すると(S)-アルコールが86%e.e.で得られた。水酸基を有する不斉炭素の絶対立体配置はメチル基の場合と逆になっているが、これはR,Sの定義のルールに依るもので、空間的は位置は変化していない。 興味深いのは硫黄部分が酸化されている基質である。スルホキシドの場合には2種類の鏡像異性体が存在し得るが、その立体配置が酵素反応にどのように影響するか調べるため両エナンチオマーを別々に反応させた。すると(S)体ではエナンチオ面選択性は98:2であったが、(R)体では低く、76:24であった。明らかにS上の立体配置は酵素の選択性に影響を与えていることがわかる。対応するスルホンも面選択性は低く75:25であった。(R)体に対応する酸素原子が選択性を低くしていると結論することができる。 酵素を単離する試みも行った。現在の所まだ精製するまでには至ってないが、本酵素は膜酵素である可能性が高いことが分かった。
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