酵母の一種であるYamadazyma farinosa IFO 10896を用いるカルボニル基の不斉還元反応を新たな基質に拡張した。これまでのこの酵母を使う研究では不斉炭素の両側へ炭素鎖を延長できるような官能基を含むものは試みられていなかった本年度はこの点に注目し、一方に炭素鎖延長反応に利用できる官能基を有するα-ヒドロキシケトンを基質として反応を行った。 まず、ヒドロキシアセトフェノンは良好な結果を与えた。増殖した菌体を含む培養液に基質を加え、2日間振盪を行うと99%e.e.以上の(S)-アルコールが高収率で得られた。ベンゼン環上の置換基が電子供与性でも求引性でも反応に大きな影響はない。 ジヒドロオキシアセトンのものベンジル保護体あるいはモノベンゾイル体を基質とした場合にも反応は進行するが、エナンチオ選択性はそれぞれ73%、80%に低下した。 酵母菌体中に複数の酵素が存在すると予想される。そこで、これらの酵素がうまく働けばラセミ体のスチレングリコールから、光学活性体が得られるのではないかと期待して、ベンズアルデヒド存在下に反応を行った。期待通り光学活性体は得られたが、鏡像体過剰率は64%程度に留まり、実用的レベルには達しなかった。ただ興味深いことに還元の際とは異なり、R体が得られたことは注目に値する。
|