本研究は、ショウジョウバエの神経系(主に神経-筋結合系)をモデル材料として、神経回路形成のメカニズムを探ることを目的とする。特に標的細胞の認識過程およびシナプス形成の初期過程に関連した機能分子の同定をめざす。昨年度計画において、異所発現トラップ法を用い、新規軸索ガイド分子の候補として1092系統を同定した。1092系統を筋肉全体において発現すると、筋肉12を支配するはずの運動神経が近傍の筋肉13にもシナプスを形成するという表現系を幼虫において示す。遺伝子クローニングの結果から1092系統近傍に存在する原因遺伝子の候補として、新規の膜タンパク質をコードするものを同定した。またこの転写産物は中枢神経内および末梢において一部の細胞において特異的に発現していた。今年度は本遺伝子が1092系統において見られた表現系の原因遺伝子であることを確かめるため、cDNAをUASの下流につないだコンストラクトをショウジョウバエ個体に導入し、24BGAL4株に掛け合わせ同じ表現系が見られるかを調べた。その結果確かにこの遺伝子が観察された表現系を生じていたことが確認された。また本遺伝子の機能欠失株を作製しその表現系を調べた。その結果筋肉12を支配する運動神経の走行に異常が見られた。以上の構造、発現、機能解析の結果は本遺伝子が神経-筋特異結合に関わる新規軸索誘導分子をコードすることを強く示唆している。
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