GSOを原子核物理学実験に使う上での一番の技術的問題点は、高い検出効率を得るために必要な大きな結晶が得られるかどうかという点にある。我々は、GSOの製造メーカーである日立化成と密に連絡をとりあって、現時点で安定に供給が受けられ、しかも^<137>Csからのy線に対してのエネルギー分解能が10%以下になる結晶の大きさを調べたが、残念なことに直径50mm、長さ50mmがぐらいが眼界であることが分かった。そこで、この大きさの結晶に内接する正六角柱GSO結晶を切り出し、屈折率が大きなオプティ力ルグリースでそれを数本貼り合わせて、長さが150-200mmの大型GSO結晶を得ることにした。正六角柱結晶の製作には成功したが、これを貼り合わせたもののテストは来年度にずれ込むことになってしまった。現在実用化されているGSO結晶は0.5mol%のGeを含んでいるが、この濃度を少し上げると蛍光減衰時間は短くなる。クリスタルボールをGeVエネルギーのγ線測定に使う場合など、この性質を利用する可能性もあったが、低いエネルギーのγ線に対する分解能の劣化が予想以上に大きく、生産コストを上げてまで濃度を変化させても余りメリットがないと判断した。エネルギー分解能を向上させるため、結晶の表面をどのようにした方が有利かについても調べている。GSOに使うため、光電子増倍管からの信号としてゲインの高いアノード信号だけでなく、ゲインの低いダイノード信号を同時取り出す特殊な高電圧デバイダーの設計を開始した。またPC-Linuxを使った安価なデータ収集系の構築のため、必要なモジュールを導入した。
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