研究概要 |
昨年度までの開発で、京大タンデム加速器で加速されるエネルギーが5-8MeV領域の陽子ビームを使った^<11>B(p,γ)^<12>C反応を用いると単色の20MeV以上のγ線が効率的に作れることが明らかになった。しかし、実際に結晶のテストを行うためには、ビームダンプからの中性子に起因するbackgroundが多かったため、ビームダンプ近くのビームパイプをこれまでの3倍の太さのものに変更するとともに、遮蔽の仕方を根本的に変え鉄ブロックとコンクリートを併用することにした。その結果、100nAレベルの陽子ビームを使ってもほとんどbackgroundがない状態を実現することが出来た。 昨年度までに入手した、総計21個の長さが50.4mm、対角の距離が50.4mmの正六角柱状のGSO結晶の基本的性質のテストを続けた。このプロジェクトの当初より問題視されて来た、結晶の育成過程の熱的ストレスから生じる結晶のクラックの影響を20MeV近くのγ線を使って調べたが、単体の結晶を調べた場合はシャワーの洩れ出しによる影響の方が大きく、特にクラックの影響による分解能の劣化は目立たなかった。しかし、クラックの比較的小さな3本の結晶を貼り合わせた場合でも、総長さ151.2mmの複合結晶は、期待される性能を示さず、長さが180mm、一辺の長さが38mmの正四角柱状の単一GSO結晶と比べた場合、その性能の悪さは明らかであった。貼り合わせる結晶の選び方、貼り合わせる方法など今後も開発を続ける必要がある。 貼り合わせた正六角柱GSO結晶を7組組み合わせてクリスタルボールの基礎モジュールを作るための準備は、宇宙線のveto用のプラスティック検出器や鉛製の放射線シールドの製作を行ったが、上記のように1組のGSO結晶でも予定していた性能が出せない状態なので全体のテストは、今後に持ち越すことになってしまった。
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