今回の研究では、21個の一辺が25.4mm、長さが50.8mmの正六角柱形の大型GSO結晶を入手して、その基礎性能をγ線源と京大タンデム加速器を使って発生させた25MeV近辺の中エネルギーガンマ線を使って評価してみた。残念ながら入手した結晶の3/4に大きな割れがあり、また完全に無色透明なものも限られた数しかなく、性能に大きなバラツキがみられた。測定されたエネルギー分解能に関しては、メーカーが出荷前に^<137>Csを使って測定した値と我々が^<60>Co及び27MeVγ線を使って評価した値との間には必ずしも強い相関がみられず、結晶の選別が非常に困難であることが明確になった。 一方で読みだし回路やデータ収集系の開発を進めつつ、入手した結晶を3本づつ組み合わせて、クリスタルボール基礎モジュールを作る準備をしたが、事前にGSO結晶の組み合わせ方を決める有効な方法は見出せなかった。ためしに入荷した順番に3本づつ、組み合わせた物を7組作り、27MeVγ線でテストしたところ、以前から所有している直方体の大きなGSO結晶と同程度のエネルギー分解能を示すものは7組中3組しか無かった。一番性能がいい#17、#16、#18を張り合わせたGSO六角柱を中心にしたクリスタルボール基礎モジュールを製作してその性能を評価したが、ある種の実験には利用できるレベルではあるがNaI(Tl)に置き換わるようなものは出来なかった。ただ、結晶の組合せ方にはまだまだ可能性が残っているので今後もメーカーとコンタクトを取りながら開発を続けたい。今回の展開研究としての結論は、GSO結晶は原子核、素粒子実験用の無機シンチレーター材料としてはまだまだ未成熟であり今後の製造技術の改善を待ちたいと思う。
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