研究概要 |
強磁場を物質に印可したときに誘起される様々な相転移を、中性子散乱を用いて研究し磁場中での磁気構造や結晶構造を研究することは大変重要である。我々は超伝導マグネットでは達成不可能な20-30テスラ頭域での中性子散乱を可能にするために繰り返しパルス磁場装置を開発した。本年度は、我々独自の3相積層構造を持ったマグネットを設計試作して、30テスラを発生することに世界で初めて成功した。さらに繰り返し率を向上するために冷却系の改善を目指してシュミレーションを行い、マグネットの最適化を図った。その結果、25テスラ以上での中性子実験が可能になり物質構造科学研究所の中性子源を利用して、耐久性試験を兼ねて実際の物質での測定を行った。この磁場は国内外でこれまで行われてきた強磁場中性子散乱の最高磁場を一挙に倍にする画期的なものである。実際本年1月にロスアラモス国立研究所で行われた強磁場中性子回折に関する国際ワークショップでは我々の成果が高く評価された。この装置を用いて本年度は三角格子磁性体CuFeO_2における非整合磁気相の磁気構造を25テスラまで測定した。その結果ほぼ5倍周期の構造が存在することが直接的に確認された。さらにこの磁場をESRや磁化などの微少試料での測定に使用するための研究開発を行い、従来の単発パルス磁場に比べて一桁以上ノイズレベルを下げることに成功し,半導体超構造などにおける不純物のESR信号の研究に応用した。
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