運動エネルギーが小さく(≦1keV)電離が極端に進んだ超多価イオンは、固体表面に入射させた際、表面近傍のナノメートル領域での構造変化・改質効果をもたらすことから、固体表面における原子分子操作技術、超微細加工技術開発への展開が期待される。本研究では、超多価イオン照射による原子レベルでの表面層構造変化の観測とその微視的機構の解析から、多価イオンを用いたナノテクノロジーの可能性を明らかにすることを最終的な目的とし、以下に述べる具体的研究課題に取り組んだ。 1.多価イオン輸送系の改善 2.プローブ法による多価イオン生成法の開発 3.多価イオン照射による2次電子放出率計測に関する装置の開発 これらの研究課題は、多価イオンを使って固体表面を改質・加工するための製造装置を開発するために、重要な要素技術課題である。今回の基盤研究の研究期間内では、多価イオンが実際に表面を修飾するための良い手段であることを示すまでには至らなかった。しかしながら、この研究は将来のナノデバイス技術に向けて、非常に研究価値のあるものと考えられ、今後の継続的な研究のための予算確保が望まれる。
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