研究概要 |
兵庫県南部地震で約750箇所の崩壊が生じた。崩壊は六甲山東部の磁鉄鉱系花崗岩の分布地域に密集することが確認された。特に,大規模な山腹崩壊箇所には沸石脈の存在が知られ,この脈を境に急速地滑りが生じていることが多い。この地域の花崗岩をみると,黒雲母中に磁鉄鉱が生じている。この磁鉄鉱は劈開中に生じており,初生的なものでなく,花崗岩の熱水変質過程で生じたものといえる。沸石脈も断層近くの破砕帯に生じていることが多く,断層に沿って上昇した熱水に由来すると考えられる。今回,科研費で購入した日本電子製のエレメントアナライザーで,これら花崗岩や沸石脈の詳細な化学組成を非破壊で行った。その結果,肉眼的にあまり風化作用を被っていない花崗岩でも,著しくCaやFeが溶脱しており,さらに,沸石脈のほかに多数の方解石脈が生じていることが明らかとなった。このように,花崗岩の化学組成を,非破壊で,採取した試料をそのまま化学分析できる装置を用いて,風化作用の段階を定量的に明らかにする事ができ,それらをコンピューターで処理し,六甲山系の現地に持参し,デジタルカメラなどで撮影し,崩壊の過程をその場で明らかにすることが可能となった。このように,花崗岩の化学組成と沸石脈や磁鉄鉱の存在から,最も危険な斜面を特定することができ,それら39箇所のリストを公表することができた。来年度はこれらデータをもとに,梅雨期に降雨と崩壊との定量的検討を計画している。
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