研究概要 |
平成11年度における本研究の実施結果は、おおむね次の通りであった。 1.平成10年度に約750箇所の斜面崩壊地域の花崗岩の風化作用で形成されたマサ土を本科学研究費で購入したエレメントアナライザーを用いて、約800個と大量に化学分析を行った。CaやFe、Al,Kなどが風化作用で著しく減少し、元素の溶脱が風化作用の指標として、有効であることが判明した。また、それらの結果を環境地質の第9号、および神戸大学都市安全センター紀要にその成果を発表した。 2.兵庫県南部地震に関わる斜面崩壊地域で、磁鉄鉱系花崗岩との対応を見るため、神戸大学のX線マイクロプローブ(EPMA)を用いて、風化作用を受けた花崗岩の黒雲母の化学分析を行い、黒雲母からのFeやKの溶脱がさらに顕著である結果を得られた。 3.斜面崩壊地において、白い筋が頻繁に見いだされ、それが滑りのもととなっている。それらをエレメントアナライザーで分析すると、沸石であることがわかり、この沸石が産する斜面では崩壊が予知されることが明らかとなった。 4.斜面のなかで、最も被害が多い、宝塚付近の急傾斜地崩壊危険区域の斜面を、現地調査し、さらに、鹿児島、広島、宮崎、屋久島などの斜面と比較し、危険度調査を実施した。このなかで、各斜面のデータベースを作成し、また、各斜面の化学分析を行い、それらを神戸大学発達科学部研究紀要としてまとめ、報告した。 5.多数の急傾斜地崩壊危険区域の斜面のデータベースを作成し、さらに、化学組成もつけ、それらからカタログを作成し、報告した。これらのなかで特に、危険度の高い39箇所の斜面のデータを報告し、その危険度を数値化した。 6.来年度は神戸市の西部地域を含め、危険斜面のカタログを作成するため、コンピュータを購入し、地図上で危険度のデータを表示する試みを行った。
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