| 研究概要 |
研究期間,平成10〜12年の科学研究費で以下のような成果が得られた。
1.兵庫県南部地震による斜面崩壊を航空写真と現地調査を行い検討した結果,崩壊は六甲山地で均等に分布せず,磁鉄鉱を含有する磁鉄鉱系花崗岩が分布する地域に多く発生していることが明らかになった。斜面崩壊の中で,花崗岩中の沸石脈が存在するところでは,沸石脈がすべり面となり,急速地滑りが生じ比較的規模の大きい崩壊が生じていることが判明した。
2.斜面崩壊の原因について検討するため,化学組成に注目して検討した。分析にあたっては,本科研費で購入した日本電子製エレメントアナライザー(エネルギー分散型蛍光X線)を用いた。この機器で斜面崩壊地の岩石を非破壊で多量に化学分析を行い,その化学的特徴を詳細に検討した。その結果,崩壊斜面の花崗岩は化学組成が変化しており,CaOやMgOなどの元素の逸脱が生じていることが明らかとなった。
3.斜面崩壊多発地域の花崗岩の化学組成は元素逸脱が顕著で,しかも元素逸脱は花崗岩の風化度とよく対応していることが明らかとなった。すなわち,Ca,Mg,Fe,K等の元素が逸脱している所は風化作用が顕著であることを示し,崩壊しやすい状況になっていることを示している。このように,斜面崩壊地の化学組成から風化度が定量的に表され,地形資料とも合わせ,斜面崩壊の予知が可能であることが判明した。
4.化学組成などの基礎データの成果を基にして,六甲山全域の斜面崩壊地の化学組成をみると,やはり元素の逸脱が激しい所では崩壊が多発しており,さらに磁鉄鉱系花崗岩や沸石脈が存在している所でより崩壊が顕著で,これら地域は特に危険度が高いことが明らかとなった。そこで,これら化学組成の基礎データから判明した危険地域を公表し,未然に崩壊を防止する試みを行った。
5.斜面崩壊多発地域の中で,特に危険な斜面については,降雨との関係をみるため,継続観察を行った。特に,宝塚付近の急傾斜地崩壊危険区域は危険度が高いため,詳細に調査し,危険度を数値化して判定を行い,崩壊予知を試みた。そして,これら調査した全斜面の基礎データをデータベース化し,カタログの形で公表し,今後に役立てる基礎資料を作成した。
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