研究概要 |
高温度高圧力条件での含水マグマの化学構造を知ることは地球惑星の物質進化における最も基本的な問題である。地球内部でマグマが発生する場合、多かれ少なかれマグマ中にはH2Oが含まれる。H2Oはソリダス温度を低下させるだけではなく、シリケイトを多く溶かし込む。最近、アルバイトメルトなどのシリケイトメルトとH2Oの混和現象が報告されている。このような混和現象が地球内部でも起こっているとすると、ソリダス温度の定義を変更する必要が生じる。すなわち、H2O中に急激にシリケイト成分が溶け込む温度が重要になってくるだろう。私達はマグマ中の水の存在形態の圧力変化を知るために、外熱式ダイアモンドアンビルセルを利用して含水マグマを作成し、顕微赤外・顕微ラマン分光法を用いたスペクトル解析を行っている。その過程で、天然の安山岩とH2Oとの間での完全混和現象を発見した。 バセット型外熱式ダイアモンドアンビルセルは、ダイアモンド全体を加熱するため、結果として試料全体を均一に加熱することができる。1050度Cよりも低温では容易に実験を行うことが可能である。ガスケットには高温で変形の少ないと考えられるレニウムを使用している。顕微赤外分光は日本分光のMICRO20とFTIR610を用いて行っている。20mmのWDを持つ標準のカセグレン鏡(16倍、NA0.5)以外に、新たに25mmのWDを持つカセグレン鏡(10倍、NA0.45)を作成した。 富士火山の1707年の噴出物であるカルクアルカリ岩質安山岩に2wt.%の水を加えたガラスをピストンシリンダーで作成した。このガラス片を水とともにDACに封入し加熱した。約1GPa、950度Cで、ほぼ完全な一相の流体がえられ、圧力の低下に伴って全体がパール状に「もやもや」し二相に分離した。臨界現象は圧力増加とともに低温度で起こると考えられる。つまり、1GPa(およそ30km)よりも深く950度Cよりも高温度のところでは、H2Oを含んだ安山岩質メルトとシリケイトを溶かし込んだH2Oフルイドの区別はなくなる。また、1000℃,1GPaにおいて安山岩質マグマの近赤外スペクトルの採集に成功した。
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