研究概要 |
計算機シミュレーションの成功の可否は、いかに高精度で、且つ実際の系に適用可能な原子間ポテンシャルを求めることができるかどうかによる。平成10年度は、O,Na,Mg,Al,Si,K,Caの7原子系についての原子間ポテンシャルを、経験的手法と非経験的手法を併用することにより極めて精密に求めることを主目標に置いた。 経験的手法(松井が担当)では、地殻、マントルの重要な構成鉱物であるシリカ、長石、カンラン石とその高圧相、キ石とその高圧相、各種酸化物をとりあげ、それらについての実測の結晶構造データ、圧縮率・弾性定数データを高精度で再現するとの条件を用いて、O,Na,Mg,Al,Si,K,Caの7原子系についての精密な原子間ポテンシャルの導出を試みた。多くの鉱物についての繰り返し計算が必要なので、計算機シミュレーションとしては、迅速な計算が可能なWMIN法を用いた。加えてWMINプログラムの整備を行った。更に、結晶中における多体相互作用を考慮すべく、イオンの大きさが結晶場の影響を受けて変化するBreathing shell modelを取り扱えるようにWMIN及びMDプログラムを改良した。 一方,非経験的手法(常行が担当)では,鉱物の高圧相の第一原理によるシミュレーションをめざして、第一原理経路積分分子動力学法プログラムを開発し、並列計算機向けの最適化を行った。また最初の応用計算として、シリコン結晶中の水素等の分布について調べ、軽元素に特有の量子効果を明らかにした。
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