研究概要 |
我々は最近,結晶内の多体相互作用を取り扱うべく,イオンの大きさが結晶場の影響を受けて,等方的に変化するbreathing shell model(BSM)を組み込んだ分子動力学シミュレーションの手法を開発することに成功した.平成11年度は,分子動力学法に加えて,エネルギー最小化法と格子動力学法を用いて,BSMを取り扱うためのコンピュータプログラムを開発した.更に,BSMを用いた計算機シミュレーションをMgO結晶,MgSiO_3の3種の多形(エンスタタイト,イルメナイト,ペロフスカイト),Mg_2SiO_4の3種の多形(オリビン,変型スピネル,スピネル)に適用することにより,これら7種の結晶のすべてについて,結晶構造と弾性定数,及びそれらの温度圧力依存の実測データを高精度で再現することに成功した.特に,体積弾性率と熱膨張率については,実測データが存在する広範な温度圧力領域に渡って,それぞれの実測値を高精度で再現することができた. 加えて,第一原理電子状態理論に基づき原子間相互作用を計算するための,第一原理経路積分分子動力学法プログラムを開発するとともに,同プログラムを用いて,超高圧下(150GPa付近)における個体水素の構造シミュレーションを行い,高温低圧のI相,低温低圧のII相,低温高圧のIII相,それぞれの構造の特徴を明らかにした.特にII相において,量子効果により分子回転が止まるという,量子局在現象を見出した.
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