研究概要 |
初年度は、「In situナノチューブ生成・観測用の電気炉レーザー蒸発・質量分析装置」の設計・製作を行った。本装置は、"高温電気炉レーザー蒸発装置"と"高質量域質量分析装置"の二つの装置を融合させたものである。 SWNTsの生成は、Fe(Co,Ni)含有の炭素ロッドの炭素直流アーク放電で初めて生成が確認されたが、収率が低いのが欠点であった。高温レーザー蒸発法はアーク放電法に比べ高純度のSWNTが得られる。本高温電気炉レーザー蒸発装置部は、(i)通常より400度高い、1,600℃まで昇温可能な特殊な電気炉を用いる、(ii)高精度のマスフロー制御装置でバッファーガス(通常、アルゴン)の流速を精密に制御する、(iii)新たに金属を内包したSWNTs(ナノワイヤ)の生成を行うために、Fe(Co,Ni)含有の炭素ロッドと純金属ターゲットロッドの二つを同時にレーザー蒸発させる、(iv)生成したSWNTsを質量分析装置部でin situに観測するためのトランスポーターを内蔵する、などの大きな特徴を有する。また、高質量域質量分析装置部はMALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization)リフレクトロン飛行時間型質量分析計である。本実験で観測対象にする"短い"SWNTsは炭素原子数が千〜1万前後(質量数10万程度まで)のチューブである。これらのサイズ領域(高質量域)のSWNTsを質量分析装置で観測するために、本装置では以下の工夫がなされている:(i)30万程度の質量数の物質を効率良く、脱離・イオン化することが知られているMALDIを用いる、(ii)高質量のイオンを高分解能で分離・検出できる、直線型イオン反射鏡を内蔵した飛行時間型(TOF)質量分析計を用いる、(iii)質量数10万程度までのイオンを効率良く検出できる後段加速を内蔵したタンデム・チャンネルプレートを検出器に用いる。
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