中間結果1:本観測システム実用化の最重要点である時間分解能の安定維持のため、まず光源系を整備した。観測の時間分解能を左右する時間原点の決定は2台のフェムト秒レーザーパルスの相互相関信号より得ているが、相互相関波形はフェムト秒レーザーの振幅雑音に敏感であるため、フェムト秒レーザーの安定性は極めて重要である。従来アルゴンレーザーをポンプ源としていたものを、2台の光源のうち一方を本年度の購入機器の半導体励起固体レーザーをポンプ光源に用いることによって振幅雑音を格段に低減化できた。他方の1台についても同様の改善をすることによって両レーザーのパルス幅(限界値)まで分解能を向上できるはずである(現在は200フェムト秒)。 中間結果2:本システムの汎用性をさらに拡げる試みを行った。これまで溶液分子や半導体量子井戸中の励起子ダイナミクスの研究には時間分解吸収スペクトル(ポンプ・プローブ分光)の測定に本システムを用いていたが、今回、時間分解四光波混合実験への適用に成功した。溶液分子のナノ秒輻射・回転緩和信号が得られたが、ポンプ・プローブ分光と異なる幾つかの実験結果が得られた。1)四光波混合法では2つのポンプビームを同時に試料に照射し、3つめのビームでプローブするが、偏光を選択することにより、純粋に回転緩和信号を抽出できた(ポンプ・プローブ分光では輻射緩和信号と混在している)。2)3つのパルスが同時に照射されたとき信号が減少した。この理由はまだ不明である。3)微弱光ではあるがポンプ・プローブ分光のようなプローブ光の背景光がないので、強い光による光検出素子の波形歪みがない。サブピコ秒域の観測結果も溶液分子と半導体量子井戸中の励起子についてが得られる予定である。第2生度への課題:まもなく本学の小型放射光施設が稼働始めるので、本システムの整備を終え、2台の光源の一方を放射光源に置き換え、システムの評価を行う予定である(論文印刷中)。
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