成果1:放射光パルスと同期できるよう高繰返しパルス発振が可能なフェムト秒レーザーを開発した。基本仕様は、パルス繰り返し率350MHz、5Wアルゴンレーザー励起、自発的自己モード同期発振、出力50mW、発振波長820nmである。高繰返しパルス発振を実現するため共振器長は47cmと非常に短く、この中で郡速度分散の補償を行うべく出力強は分散プリズムに部分透過鏡をコーティングしたものを設計して使用した。これにより非常にコンパクトで放射光施設への搬入出が便利になった。また現在使用のアルゴンレーザーを本補助金で購入した半導体レーザー励起の緑色固体レーザーに置き換える予定であり、小型・堅牢化がさらに促進され、そして冷却水と電力の低減化が図られる。 成果2:本(サンプリング分光測定)システムの汎用性をさらに確認する新しい知見を得た。昨年度サンプリング分光法時間分解吸収スペクトル(ポンプ・プローブ分光)の測定と時間分解四光波混合実験への適用に成功したが、今年度、半導体量子井戸の試料を用いて時間分解四光波混合用によりコヒーレント分極の位相緩和と励起子スピン緩和及び励起子再結合緩和(励起子寿命)の過程を分離抽出できることを新たに見出した(論文発表)。 次年度への課題:本研究期間中使用予定の本学付属小型放射光施設の稼働が1年遅れたため、本課題の一部の実施が遅れた。その間、本手法をレーザーと放射光の併用実験へ適用する場合の技術的検討と今後の展開についてまとめた(論文発表)。研究期間中に本システムの基本性能を確認できたので、期間終了後も放射光源を併用したシステムの評価を行う予定である。
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