1-i)ポリシラン類のケイ素-ケイ素単結合は、そのイオン化ポテンシャルの低さから明らかなように、非常に高い電子供与能を有し活性な炭素-炭素二重結合のそれにに匹敵する。これらはテトラシアノエチレン等の電子受容体と容易に電荷移動(CT)錯体を形成することから、C60やC70の場合もその酸化還元電位やイオン化ポテンシャル等の物性値から判断して、容易にCT錯体を形成することが予想できる。即ち、ポリシランとの光誘起電子移動反応によりケイ素-ケイ素単結合ユニットにより連結されたフラーレンの合成が成し得る。電子供与基であるSi-Siユニットと電子受容体であるC60ユニットを有するポリマーは導電性材料や電子伝達系への応用が確信される。本年度はジシラン、トリシラン等のシクロポリシランやポリシラン類との光誘起電子移動を経由する光シリル化反応を検討した。特に、電子供与能の高いSi-Si結合を有するジシラシクロプロパンをターゲット分子として用いる光反応を試み、相当するフラーレン化ケイ素化合物を得ることに成功した。 1-ii)合成したケイ素化フラーレンの紫外可視吸収スペクトル、酸化還元電位の測定を行ない、付加体は特徴的な吸収スペクトルを示し、C60よりも電子豊富なフラーレンの生成が確認された。 1-iii)フラーレンをドーピングしたポリシランの光伝導を調べ、光キャリア発生効率向上の検討を行うと同時に、高移動度を持つかを調べた。即ち、PMPSの吸収ピークに対応する330nmにおける、光伝導を調べている。さらに、ポリシランとフラーレンの間に電荷移動が生じているか調べ、また、蛍光スペクトルの測定も検討している。特に、パイ電子系側鎖ポリシランとフラーレンの間の光誘起電荷移動による光キャリア発生効率の向上がみられるかを検討しており、ケイ素化フラーレンが光キャリア発生効率の向上に有効なドーパントであることを明らかにしたい。
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