研究概要 |
縮合環芳香族架橋配位子をもつロジウム複核錯体ならびにそのカチオンラジカル塩を合成し、これらの結晶構造,カチオンラジカルの配位子上のスピン分布,ラジカル塩結晶の磁性,電気伝導度,および電子スペクトルを調べて、分子内ならびに分子間相互作用と物性の関係について検討し、以下のような成果を得た。 1.アミダート架橋配位子をもつロジウム複核錯体カチオンラジカルの不対電子は金属原子間δ^*軌道を占めさらに配位子π系へ非局在化していることを明らかにした。2.縮合環芳香族架橋配位をもつロジウム複核錯体カチオンラジカル溶液のNMR常磁性シフトに基づき芳香上のπスピン分布を明らかにした。3.ロジウム複核錯体カチオンラジカルの種々の塩結晶の磁性を調べ,ラジカル分子間でスピン密度の大きな原子同士が近接した結晶構造をもつ塩の磁性がキューリ則から外れた興味深い磁性を示すことを見出した。4.ラジカル塩結晶の電子スペクトルは,溶液スペクトルに比較して長波長シフトした吸収帯をもつ。またこの長波長シフトは,ラジカル分子間でスピン密度の大きな原子同士が近接した結晶構造をもつ塩において著しいことを見出した。5.種々のラジカル塩結晶の電気伝導度を調べ,いずれのラジカル塩結晶も10^<-7>Scm^<-1>程度の伝導度をもつ半導体であることを見出した。また,伝導度はスピン分布とは直接的な相関を示さず,むしろ隣接分子間距離が短いほど高い伝導度を示すことを見出した。6.縮合環芳香族架橋配位子をもつ中性ロジウム複核錯体結晶とそのカチオンラジカル塩結晶を機械的に混合すると,電気伝導度が千倍以上大きくなることを見出した。 第6項に記載の機械的混合により新しい相が生成しているか否かを明らかにすることが今後の課題である。
|