研究課題/領域番号 |
10554038
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
川村 尚 岐阜大学, 工学部, 教授 (40026125)
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研究分担者 |
海老原 昌弘 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (80201961)
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キーワード | ロジウム / クラスター錯体 / カチオンラジカル塩 / πスタック / 電導度 / 磁性 / 非局在化 / 電子ドープ |
研究概要 |
大きな芳香環をもつ架橋配位子、4-methyl-2-quinolinol(mhp)、ならびに2-quinolinol(hq)を架橋配位子とするロジウム複核錯体、[Rh_2(mhq)_4py]ならびに[Rh_2(hq)_4py]、とそのカチオンラジカルを合成単離した。[Rh_2(mhq)_4py]とそのカチオンラジカルの混合物のNMRにおける常磁性シフトの解析に基づいて、カチオンラジカルの金属原子間のδ^*軌道に生じた不対電子は、4つの芳香族架橋配位子のπ系内にそれぞれ9%ずつ非局在化していること、ならびに芳香環窒素原子から数えて1つ置き炭素原子上へのスピン密度非局在化のの大きいことを明らかにした。更に、カウンターイオンの異なる[Rh_2(hq)_4py]カチオンラジカル塩結晶を4種類合成単離し、それらの結晶構造を明らかにした。いずれ結晶においても芳香族架橋配位子の分子間πスタッキング構造が見られた。カチオンラジカル塩の磁化率の温度依存性を調べ、分子間πスタック構造において、スピン密度の大きな炭素原子同士が近接しているときのみ、隣接ラジカル間のスピン間相互作用が反磁性的で大きくなることを明らかにした。また、カチオンラジカル塩のみの電導度は10^<-7>Scm^<-1>程度で小さいが、これに反磁性の中性錯体と機械的に混合すると、千倍以上の電導度の上昇することを見出した。これが、実質的にカチオンラジカル塩への電子ドープをもたらし(部分酸化体の形成)、試料全体に渡る電子のホッピングにより電導度上昇が生じたことを、機械的混合物のESRスペクトルの解析に基づいて明らかにした。これらの結果は、芳香族架橋配位子の分子間πスタッキングを利用したクラスター錯体部分酸化体構築により新規電導性物質が創製できることを示している。
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