研究概要 |
2分子膜を容易に形成すると思われる1,1'-dihydroperfluoroalkyltrimethylammonium chlorideの合成をライオン(株)の研究分担者が行い、その基礎物性を九大の研究代表者と分担者が測定することで研究を進めている。合成の収率が低いこと並びに精製が困難なこと等で現在まで合成できた目的物は次の3種類である;C_7H_<15>CH_2N^+(CH_3)_3Cl^-,C_9H_<19>CH_2N^+(CH_3)_3Cl^-,C_<11>H_<23>CH_2N^+(CH_3)_3Cl^-。最初の物質については、水溶液中に形成される分子集合体の臨界ミセル濃度(CMC)の温度変化を電導度法により精密に測定し、相等する炭化水素鎖長の化合物に比較し遥かに低いCMC値を得た。現在分子集合体のサイズを調べているが、結果は得られていない。また、その気/液界面物性を界面張力測定により検討中である。残る二つについては精製中である。 目的物が入手出来るまで関連する物質についての基礎物性を測定した。その研究成果が項目11の研究発表の内容である。特に目的物質と密接に関係するperfluoro-1-alkanoic acidについて、その炭素数が1から13まで酸の酸解離定数を正確に決定した。一般的にパーフルオロカルボン酸は強酸として知られているが、測定結果では強酸とは言えず、且つ炭素数の増加と共に酸解離定数は極大値を経たのち減少することが明らかとなった。これは予想されなかった新発見である。 更に、ミセル形成温度に及ぼす対イオンの添加効果を精度良く測定し、測定結果を理論的に正確に評価できることが明らかとなった。 現在長鎖の目的物を合成中であるので、高純度の目的物が出来しだい水面上の単分子膜状態での相変化の検討を開始したいと思っている。
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