研究概要 |
アルキル基の炭素数が異なる炭化弗素系両親媒性物質1,1-dihydroperfluoroalkyltrimethylammonium chlorideの3種類(C-7,C-9,C-11)をライオン株式会社で合成し、それらの溶液物性と界面物性を九州大学で測定した。溶液物性については臨界ミセル濃度を溶液電導度で決定し、界面物性については吸着膜と不溶性単分子膜の状態変化を調べた。得られた結果は以下の通りであった。 1)臨界ミセル濃度の対数を炭素数に対してプロットすると良い直線関係が得られた。また、直線の勾配よりミセル形成に及ぼすCF_2当りの疎水性は、CH_2当りの1.7倍であった。 2)空気/水界面上に形成される吸着膜の分子占有面積から、広い所ではC-7がより密に詰まり、狭い所ではC-9がより密に詰まっていることが明らかとなった。 3)C-7,C-9 は、水面上に不溶性単分子膜を形成しなかったが、C-11はNaCl溶液上に不溶性単分子を形成した。分子占有面積の減少に伴い気体膜から直接固体膜への相変化が認められた。 次に、本研究の主な研究課題である「分子膜を介しての水分子の移動速度」の測定装置の開発を設備備品を用いて行った。移動速度は上記の両親媒性物質で修飾された空気/水界面を介しての水の蒸発速度を水溶液重量の時間変化から追跡した。多くの苦労を伴ったが、再現性のある時間変化が取れる迄に改良することが出来た。その結果、水面上の両親媒性物質が液体吸着膜状態である場合には蒸発速度に全く変化が認めれらなかった。これは、表面過剰量から計算される分子占有面積に大きな疑問を提起するものとなった。
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