研究概要 |
アルキル基の炭素数が異なる炭化弗素系両親媒性物質N-(1,1-dihydroperfluoroalkyl)-N,N,N-trimetyl-ammonium chlorideの合成は研究分担者(ライオン株式会社)に依頼し、溶液物性と界面物性の測定は九州大学で担当した。研究実績の概要は以下の通りである。 1)上記物質は臨界ミセル濃度以上の水溶液中で分子集合体を形成し、その平均分子会合数は炭素数と共に増加した。また、分子集合体のモノマーへの解離反応の半減期は鎖長と共に増大し、且つ解離の活性化エネルギーも同様であった。 2)C-11の上記物質とperfluorododecanoic acidの不溶性混合単分子膜を水面上に展開し、分子占有面積と単分子膜状態の関係を調べた。両者の間には水面上で強い相互作用が存在し、組成比1:1のコンプレックスの形成が認められた。研究成果は、現在Journal of Colloid & Interface Scienceに投稿中である。 3)本研究の主題である「分子膜を介しての水分子の移動速度」については、本研究の設備備品を用いて精力的に研究した。先ず、水の蒸発速度を温度を変えて測定し、蒸発の活性化エネルギーの温度変化を求めた。次に炭素数の異なるn-alkanolについても同様に、蒸発の活性化エネルギーを求めた。得られた結果より、炭素数12のドデカノールでは、液体状態で分子がループ状にまいていることが明らかになった。この研究成果は、近くJournal of Physical Chemistryに投稿予定である。 4)水面上の不溶性単分子膜を介しての水の蒸発速度は、空気/純水界面の蒸発速度よりかなり遅く、単分子膜の効果が認められるが、水相からの吸着膜では膜の効果は殆ど認められなかった。
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