1) 超分子固体では、キラルでない化合物(ゲスト分子)がキラルな化合物(ホスト分子)と相互作用することにより分子不斉が誘導され、エナンチオ選択的に光反応が進行する。この場合、出発ゲスト分子のキラリティーは溶液中のCDスペクトルでは観測されず、分子不斉がホスト分子のキラリティーにより一方に固定される固体状態ではじめて観測される。固体状態でのCDスペクトルには様々なartefactが混入する危険がある。その原因をつきとめ、正しいスペクトルを得る方法を検討した。 2) 溶液、固体状態で類似スペクトルを示す化合物で、固体状態の試料調整法を検討した結果、良好なスペクトルを得る方法を確立した。1)の系では、われわれのものとかなり異なったスペクトルが過去に報告されており、偽スペクトルの原因を種々推察した。 3) 固体中での光反応をCDで追跡し、等吸収点を示す良好なスペクトルを得るの成功した。 4) 巨視的異方性を測定により消去し、artefactのない真のCDスペクトルが得られる固体専用CD測走装置の開発にとりかかった。市販CD装置よりも性能の高い部品を検討し組み立てている。CDシグナルに混入するLD、LB、LD'、LB'、Photoelastic modulatorの残留ひずみなどを直接に電気信号として測定し、数値化する方法を検討中である。上記のKBr錠剤は巨視的異方性が小さく、補正項は無視できるほどに小さいことがく明らかとなった。巨視的異方性が大きいサンプルでは本来CDがないのに、大きな偽のシグナルを示す。その原因項を計算で差し引き、強度ゼロのスペクトルが得られるように、装置サイドの検討を行っている。現方法では、巨視的異方性が非常に大きい場合には、偽のCDシグナルを完全には打ち消せないが、大幅に減少させられる事があきらかになった。
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