研究概要 |
初年度と同様に,研究分担者の合成した光学活性界面活性剤の提供を受け,それらをミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)の擬似固定相として用いて光学異性体の分離に関する研究を行った。研究分担者である大阪市立工研の中村からドデシルグリセリルエーテル硫酸カリウム,ドデシル-N-メチルグルカミドおよびドデシル-N-メチルグルカミドの硫酸塩の提供を受け,これら界面活性剤ミセルを擬似固定相として用い,アミノ酸誘導体,種々の光学活性薬物のMEKCによる分離を試みた。ドデシルグリセリルエーテル硫酸カルシウムについては50種類以上のラセミ化合物に対して中性条件で,濃度を5,10,15,20mMと変化させ光学異性体分離の可能性を調べた。10mMでアトロピン,トリミプラミン,ケタミン等7種の薬品について分離の兆候が見られたが,完全分離には至らなかった。ドデシル-N-メチルグルカミドは非イオン性であり硫酸ドデシルナトリウムと混合ミセルを形成させ,その硫酸塩はそのまま擬似固定相として用い,中性条件で約40種のラセミ化合物の光学分割を試みたが,光学異性体の分離は実現しなかった。しかし,この界面活性剤ミセルを擬似固定相として用いて種類の違う化合物の分離はできているので,この界面活性剤がMEKCの擬似固定相として働いていることは明らかであった。引き続き光学異性体の分離のための条件検索を行っている。本研究に関連して,キラル固定相を用いるキャピラリーエレクトロクロマトグラフィーによる光学異性体の分離,質量分析計をキャピラリー電気泳動による光学異性体分離の検出器として用いる研究も行った。研究分担者である老田と中村が,他に新しいタイプの光学活性界面活性剤を合成中であり,それらが提供されれば,さらに検討を継続する予定である。
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