研究概要 |
研究分担者の中村から新規光学活性界面活性剤である硫酸N-ドデカノイル-N-グルカミドナトリウムの提供を受け,そのミセルをミセル動電クロマトグラフィーの擬似固定相として用い,種々の光学活性化合物に対してキラル識別能を調べた。界面活性剤濃度100mMを用い,弱アルカリ性(pH9.0)及び酸性(pH2.2)の条件で分離を検討した。20mMリン酸塩-ホウ酸塩緩衝液(pH9.0)を用いた場合には電気浸透流が強く,ミセルも陰極方向へ移動した。この条件では5種のアミノ酸であるバリン,ノルバリン,ロイシン,ノルロイシン,トリプトファンのダンシル誘導体エナンチオマーが一斉に分離できた。バリン及びノルバリン誘導体に関しては分離が完全ではないが,界面活性剤濃度を高くすれば完全分離可能になると期待された。別のアミノ酸誘導体であるイソロイシンのフェニルチオヒダントイン誘導体についても,同じ条件でエナンチオマーの部分分離が可能であった。アミノ酸以外でトルペリソンはアルカリ性条件でエナンチオマー分離が可能であった。親水性の強いアミノ酸であるセリンのダンシル誘導体は20mMリン酸緩衝液(pH2.2)中では分離が可能であった。この場合には電気浸透流は抑制され,ミセルは陽極方向に移動した。さらに異なる光学活性試料について検討する予定である。一方,本研究に関連した光学異性体分離に関する研究として,塩基性タンパク質であるアビジンを吸着させた中空キャピラリーを用いるキャピラリーエレクトロクロマトグラフィーに関する研究も行い,種々の酸性エナンチオマーの分離が短時間で可能なことを明らかにできた。
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