これまでの2年間で、微細藻類を布製ベルト上にのせたベルトコンベアー方式の二酸化炭素固定装置を作製し、十分機能することを示した。その装置を屋外に設置するためには微細藻類からの水分蒸発や風による飛散を防ぐ必要性が生じ、そのため水蒸気を遮断し二酸化炭素と酸素を通す透明なシートでベルトを覆うとよいと考えた。しかし、工学系の研究者やシート製造業者から情報を集めた結果、残念ながらこの目的に適うシートは生産されていないことが明らかとなった。一方、室内の空気(約800ppmCO_2)を通気して培養したクロレラとスピルリナを用い、気生状態での光合成特性を調べた。その結果、大気のCO_2条件(400ppm)でも光強度が高ければ(2000μmol・m^<-2>・s^<-1>)、クロレラで2gCO_2・m^<-2>・h^<-1>、スピルリナで4gCO_2・m^<-2>・h^<-1>の高いCO_2固定活性が得られた。このことから、上記のシートが入手できれば、ベルトコンベアー方式による二酸化炭素固定システムは屋外測定を残して原理的には完成したといえる。今後、その特性をもつシートを海外を含めて探すとともに、ガス透過性のない透明シートを利用した系の開発を検討することにした。また、本システムをよりよいものにするためには、微細藻類の光合成能力をさらに高めることや、乾燥耐性能力を高めることも大切である。そこで、Synechocystisにおける脱水・乾燥に対する応答機構を調べた。その結果、あらかじめ脱水処理を繰り返した細胞やソルビトールを加えた細胞は、3時間の脱水・乾燥に対して耐性が高まることが明らかとなった。また、脱水・乾燥時に発現調節を受ける遺伝子が見いだされた。さらに、光化学系II活性の維持にチラコイド膜の酸性脂質フォスファチジルグリセロールやスルフォキノボシルジアシルグリセロールが重要な働きをしていることも判明した。
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