微細藻類の中にはろ紙や布などの固相面の上で光合成を行えるものがある。その能力を生かして、大気のCO_2固定化システムを構築することをめざした。まず、種々の微細藻類を用いてろ紙の上での光合成活性を測定したところ、緑藻クロレラやクラミドモナス、紅藻ポルフィリディウム、ラン藻スピルリナやシネコキスティスなどが高い活性を示すことが明らかとなった。また、クロレラはかなりの脱水状態になるまで、光合成活性が保持されていることも判明した。そこで、クロレラやスピルリナを用いて、布をベルトとするベルトコンベアを作製した。布の種類や細胞ののせ方、細胞の回収方法を検討し、自動化に近い条件で光合成を行わせることが可能となった。しかし、屋外では、風などにより水分の蒸発が早く、蒸発を防ぐための透明ビニルシートが必要となった。水分子を通さず、CO_2やO_2分子を透過できるシートはまだ見い出せず、さらなる工夫が必要である。リアルタイムに葉の光合成速度を測定する装置を用いて、ろ紙上の微細藻類の光合成速度を測定することを試みた。この装置では、水分を含んだ空気中のCO_2濃度を赤外部の吸収で測定し、高等植物葉の蒸散を含めて計算で求めている。しかし、ろ紙上に置いた微細藻類は蒸発が早く、光を当てない暗中ですら計算値は正の値が得られた。水による誤差を補正したところ、水分を除いてからCO_2濃度を測定した時の結果とほぼ一致する結果が得られた。この方法で、光が当たり始めてからの光合成速度の時間変化を調べたところ、定常値に達するまでの時間がスピルリナで15分以上かかるのに対し、クロレラでは数分後に到達することが明らかになった。さらに、チラコイド膜の酸性脂質が光合成、特に光化学系IIタンパク質複合体の構造維持に関与し、活性保持に寄与していることも明らかとなった。
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