研究概要 |
磁場を用いてタンパク質の高品質単結晶を育成するべく,結晶化に磁場が及ぼす影響およびそのメカニズムを解明するために,以下の研究を行った.([*]印分については論文投稿済み) 1. 5T超伝導磁石の立ち上げ 平成11年1月に表記の磁石を立ち上げた. 2. 磁場中で使用可能な無限焦点型顕微鏡の 強磁場下で結晶が成長している過程をその場観察するために、光ファイバーおよびCCDカメラを用いて強磁場下用の透過光型光学顕微鏡を設計・作製し,11Tの磁場下でリゾチーム正方晶系結晶の成長過程を0.5μm解像度でその場観察することに成功した.その結果,強磁場下では結晶の成長速度が明らかに減少することを明らかにした. 3. 磁場中でタンパク質の結晶化学実験[*] タンパク質結晶の磁場配向現象を定量的に理解するためのモデルを提案した.リゾチーム分子は帯磁率の異方性が非常に小さいため,1分子ではもちろん臨界核を超える程度の大きさの凝集体であっても,それらに働く磁場配向効果は非常に小さく無視できる.しかし,結晶は,溶液中を沈降しながら成長するに伴いより大きな磁気エネルギーを得ることができるようになるため,徐々に磁場配向しやすくなる.そのため,磁場による結晶の配向率は,磁場の強さのみならず,結晶の成長速度および容器の深さに大きく依存することがわかった.4. 磁場中で育成した結晶の評価 リゾチーム正方晶を用いて実験したが,無磁場下で既に非常に高解像度の結晶が得られる系で実験したため,磁場の有効性は確認できなかった.H11年度に,放射光を用いた精密解析を予定している. 5. 「高圧力・微小重力」という磁場以外の外場が及ぼす影響について[*,*] 高圧力下で溶解度を測定し,タンパク質分子が水和・脱水和する際の体積変化を計算した.また,微小重力下での密度対流の発生がグラスホッフ数で適切に予測できることを明らかにした.
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