研究概要 |
磁場を用いてタンパク質の高品質単結晶を育成するべく,結晶化に磁場が及ぼす影響およびそのメカニズムを解明するために,以下の研究を行った.([*]印分については論文投稿済み) 1.NaCl水溶液中の「対流」の抑制について[*] 温度差を利用して,NaCl水溶液中に定常的な密度対流を誘起させた.そして,平成11年度に作成した強磁場下用光学顕微鏡を用いて,10Tの均一・定常磁場下で対流をその場観察した.その結果,これまで半導体融液などの金属液体の場合には磁場が対流を抑制することが知られていたが,「水溶液」の場合においても均一磁場によって対流が顕著に減少することを世界で初めて見出した. 2.磁場によるタンパク質結晶の「品質」の向上について[*] リゾチーム斜方晶系結晶を10Tの均一・定常磁場下で育成し,高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所にてロッキングカーブを測定した.その結果,強磁場下で結晶を育成することにより,結晶の「品質」が格段に向上すること,高分解能の回折デー夕が得られること,X線損傷をうけにくくなること,などを世界で初めて明らかにした. 3.「高圧力」という磁場以外の外場が及ぼす影響について[*] 高圧力下でリゾチーム正方晶および斜方晶系結晶の溶解度を測定し,タンパク質分子の水和・脱水和の体積変化を求めた.また,高圧力下では結晶の表面エネルギーが増加するために成長速度が減少することを見出した. 4.「微小重カ」という磁場以外の外場が及ぼす影響について 微小重力下で,水の温度差マランゴニ流のその場測定に成功した.その結果,空気-水の界面形成後10-15分で界面は汚染され,マランゴニ流の流速が1/10以下に減少することを見出した.
|