研究概要 |
ダイヤモンドを成長させる際に,フォトリソグラフィー技術を用い,異方性エッチング技術により逆ピラミッド状にエッチングしたシリコンを基板として使用する,いわゆる鋳型成形(モールド)法によるピラミッド状ダイヤモンドの作製技術を利用し、これと尿素を用いた新しいダイヤモンドへの高濃度窒素の添加方法を組み合わせることで、0.2V/μm程度の非常に低い電界における電子放出現象の確認および電池駆動可能なピラミッド状エミッタアレーの開発に成功した.これらの低電界における電子放出機構の解明のため,放出される電子のエネルギー分析をSimultaneous field emission & photoemission techniqueという技術を利用し測定した.その結果,窒素添加ダイヤモンドからの電子放出の場合,他のダイヤモンドの結果と異なり,フェルミレベル近傍の比較的高いエネルギーを持った電子が放出されることが確認された.これらの結果を,論文誌MRS ProceedingsおよびAppl.Surface Sci..に報告した.さらに,ダイヤモンドへのキャリア注入に着目し,注入電極依存性に関し,論文誌Appl.Surface Sci..に報告した.さらに,このような窒素添加ダイヤモンドからの低電圧/電界での電子放出現象の解釈の一つとして,"space charge interlayer"modelを提案し,論文誌J.Vac.Sci.& Tech.Bに報告した.また,近年のダイヤモンドからの電子放出に関するレビューとして電子情報通信学会誌に招待論文が掲載された. 以上,まだ明らかにされていない問題点も残されているものの,次年度以降の電子放出機構の解明やデバイス作製のために必要な最低限の実験結果の蓄積や理論的考察が,今年度の研究で行えたものと考えている.(765文字)
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